会長あいさつ

大木 公彦

鹿児島県は温帯から亜熱帯に属し、多種多様な動植物が見られます。
その豊かな生態系は、鹿児島県が南北600キロメートル、東西270キロメートルにもおよぶことと、黒潮と火山のめぐみによって育まれています。
とくにトカラ列島の悪石島と小宝島の間に引かれる渡瀬線は、大きく動物地理を分け、東洋亜区(熱帯系)と旧北亜区(温帯系)の境界線となっています。
この渡瀬線の位置は、黒潮が横切って太平洋へ流れ出ている水深800メートルにも達するトカラ海峡に一致し、この海峡がいつ形成されたかが動物地理を分けた時代を推定する上で重要な鍵となっています。
鹿児島県は世界自然遺産に登録された屋久島をはじめ、4つの国立公園、2つの国定公園、3つの日本ジオパーク、さらに2つのラムサール条約登録地があり、日本の活火山の1割に相当する11の活火山や変化に富んだ海岸線を持つ、豊かで美しい自然に恵まれた場所です。

鹿児島県自然環境保全協会の前身である鹿児島県自然愛護協会は、1967年に「鹿児島県の自然の保全のために積極的に活動をし、県民に自然愛護の思想を広めること」を目的に設立されました。
1975年から1999年まで、県の補助金で会誌「自然愛護」を発行し、会員と関係機関に配布してまいりました。
2000年、会費のみによる新運営体制に移行したことを契機に、会誌の内容もこれまでの研究者中心であったものから、団体会員の活動記事も掲載し、自然に関心を持つ市民の参加によって親しみやすい会誌へと変えました。
2007年、協会活動のさらなる発展のため、会誌「自然愛護」も3月に発行した33巻をもって終わりとし、翌年からこれを引き継ぐかたちで「Nature of Kagoshima(和名:カゴシマネイチャー)」の名で会誌を発行していくことになりました。
2008年3月に発行した「Nature of Kagoshima, Vol. 34」より、国際基準逐次刊行物番号(ISSN 1882-7551)を取得し、鹿児島県の自然や自然保護に関する情報を、国内はもとより、世界に向けて発信できるようになりました。

「Nature of Kagoshima」の内容は、親しみの持てるごく一般的な報告から専門性の高い論文や新種記載に関する論文まで多種多様です。
今後とも、自然を愛護するだけでなく、生物や環境を含めた鹿児島における自然の基礎データや魅力を伝える情報誌として、また会員自らが楽しみながら作り上げる会誌として、発展充実させてまいりたいと考えております。

「鹿児島の自然が大好き」という多くの方々や団体の皆さまには、是非ご入会いただき、この会を育てていただきますよう心よりお願い申し上げます。

平成29年4月28日
鹿児島県自然環境保全協会
会長 大木公彦

略歴

大木 公彦(おおき きみひこ)

鹿児島大学名誉教授 / 地質学(理学博士)
1947年生まれ
鹿児島大学理学部で教育・研究に携わる。南九州から琉球列島に至る地域の過去300万年間の大地の動きとともにこの地域の周辺海域の堆積環境についても調査研究を行う。
地質の視点から、地域の食や暮らし、文化・歴史、産業、ツーリズムなどを捉えて、普及啓発活動に取り組んでおり、各地で講演や自然体験ツアーのガイド等も行っている。
2005年度から退職する2011年度まで鹿児島大学総合研究博物館長、鹿児島大学総合研究博物館・教授、大学院理工学研究科・教授を歴任し、2012年3月退官
現在、 鹿児島大学名誉教授、桜島ジオパーク研究会座長、環境省エコツーリズム推進アドバイザー、鹿児島県文化財保護審議委員会副会長、鹿児島県環境影響評価専門委員、桜島・錦江湾ジオパーク推進協議会委員
「鹿児島湾の謎を追って」、「写真集 地球からのメッセージ鹿児島」、「日本全国沿岸海洋誌」、「日本の地質9 九州地方」、「日本地方地質誌8:九州・沖縄地方」など著書、共著多数
専門分野は地質学(微古生物学、堆積学、後期新生代層位学)、ジオツーリズム、ジオパーク、エコミュージアム

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